コラム詳細

2024/01/06

CHANEL J12の価値

シャネルのブランドと時計

1910年に誕生したフランスのオートクチュールメゾンであるこのブランドは、1世紀以上にわたって世界中でその名を轟かせてきました。「ココ・シャネル」として知られるガブリエル・シャネルによって設立されたこのメゾンは、フレンチシックなエレガンスを体現しています。

ココ・シャネルは当時、過剰な装飾にまみれた女性のファッションを、そのシンプルで洗練された美学によって刷新しました。ブルターニュの漁師の作業着であったマリンボーダーを愛し、スポーツウェアだったジャージー素材でエレガントなクチュールを生み出し、チェーンをバッグに持ち込んだ革新者のエスプリは、カール・ラガーフェルドに受け継がれました。

彼は2019年、世界に惜しまれつつこの世を去りますが、現在ラガーフェルドの右腕として活躍したヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)が彼なきメゾンを守っています。

「Première(第一)」の時計と「12」の時計

シャネルは、香水「N°5」の香水瓶にインスパイアされた「プルミエール」ウォッチで、1987年に時計業界に参入しました。その後シャネルが時計においても認知されるきっかけになったのが、2000年に登場した「J12」の発売です。レーシングヨットにちなんで名付けられたJ12は、当時シャネルのアーティスティックディレクターであったジャック・エリュー(Jacques Helleu)によってデザインされました。

もともとJ12はジャック・エリューが自分自身のためにデザインした時計でした。唯一無二でタイムレスな、洗練された黒をまとったメンズウォッチを見つけることができなかったから、理想の時計を自分で作ったのです。

そして世界で最も重要な時計見本市「バーゼルワールド」で彼が試作品のJ12を着けて歩いていると、ロレックス代表に「その時計を発表すれば大ヒットすること間違いないでしょう」と言われ、実際その通りとなりました。シャネルのJ12はすぐに成功し、特に時計業界では革新的だったホワイトセラミックを使用したものは今もなおシャネルウォッチのベストセラーでありつづけています。

シャネルの時計製造技術とココ・シャネルの遺産が更なる高みでクロスオーバーする

ジュネーブで催された高級時計見本市「Watches and Wonders 2022 」で、J12 Chanel Diamond Tourbillon Caliber 5が注目を集めました。これは、パリのヴァンドーム広場にあるシャネルの時計製造部門「Studio de Création Horlogerie Chanel」のディレクター、アルノー・シャスタンによってデザインされました。文字盤の中心部にソリテールダイヤモンドを、ベゼルにはバゲットカットのダイヤモンドをあしらったラグジュアリーなデザインです。機能面で注目すべきなのが、新たに搭載された「キャリバー5」です。このキャリバーにはフライングトゥールビヨンムーブメントが搭載されており、その中心に据えられたダイヤモンドが秒のリズムに合わせて回転します。トゥールビヨンとはムーブメントにかかる重力を分散させることにより、ズレのリスクを軽減する機能です。これは複雑な機構を要することから、複雑巧緻な機械美がムーヴメントにもたらされます。さらにフライングトゥールビヨンは複雑機構が浮き出るように設置されるもので、より一層見た目の美しさが引き立ちます。そんな「キャリバー5」こそ、シャネルウォッチコレクションの5作目の自社ムーブメントであり、最初のフライングトゥールビヨン ムーブメントです。

ムーブメントについて話すと、2021年に発表されたJ12の33㎜モデルにおいても、そのムーブメントに大きな注目が集まりました。この時搭載された「キャリバー 12.2エディション1」は高品質なムーブメントを製作するケニッシ社製のものでした。ケニッシ社はロレックスの兄弟ブランドチューダーにムーブメント提供を行っていることでも有名で、シャネルはケニッシ社の出資元でもあります。

ユニセックスなスタイルで知られるJ12ですが、この33㎜と小ぶりなケースは特に女性が使いやすいサイズ感です。キャリバー12.2は従来のクォーツムーブメントに取って代わる自動巻きムーブメントでした。このムーブメントの強みは優秀な巻き上げ性能にあり、これほどに女性用のスタイリッシュかつ機能的な時計はそう多くはありません。

この革新的なキャリバー12.2から、更なるバージョンアップを遂げたキャリバー5は、パリカンボン通りにあるメゾンの伝統とあらたな革新性を紡ぐメゾンのマスターピースです。このエディションは、ガブリエルシャネルの象徴的なナンバーにちなみ、55本の数量限定です。

ユニークなセラミック素材

J12の素材はマットセラミックです。J12が発売された当時、セラミックは時計の素材として使われることは殆どありませんでした。しかし軽くて独特な風合いを持つセラミックは、J12のタイムレスで洗練されたデザインを一層ユニークなものに昇華させます。ホワイトは純潔で明るい印象を、ブラックはその漆黒においてダイヤモンドのきらめきが一層際立ちます。

まとめ

このようにシャネルは、ブランド初の時計「プルミエール」の卓越したデザイン性で女性の心を掴み、最新の「J12」は優れたムーブメントを搭載して大幅に機能が向上しました。現在シャネルの時計は、日々の相棒としてはもちろん、シャネルというブランド価値も相まって資産としても非常に高い価値がある時計です。

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