コラム詳細

2024/01/29

王冠にふさわしい、ロレックスのパーフェクション

ROLEXのはじまり

ロレックスというブランドは、一言でいうと創業者の本質を見つめる姿勢の表れです。その創業者の名前はハンス・ウィルスドルフ(Hans Wilsdorf)。彼はドイツからロンドンに移住し、義兄弟のアルフレッド・デイビス(Alfred Davis)とともに1905年、ロレックスの前身「ウィルスドルフ&デイビス社」を立ち上げます。

この時彼らは、マニュファクチュール(製造会社)のように一から時計を作るというよりはむしろ、スイスの時計パーツをロンドンに輸入して、イギリス製のハードウェアと組み合わせて時計を作ろうとしていました。しかし後に彼らはアトリエをスイスに開設します。その時スイスは時計製造の揺籃の地として最も先端をいく地でした。彼らは最高の時計作りを知るにはこの土地に出向かなければならないことを悟ったのです。

また、ハンス・ウィルスドルフは社名について予てから模索していて、あらゆるアルファベットの組み合わせを考えていました。名前は簡潔でどんな言語においても発音しやすくて覚えやすく、文字盤上で映えるものであるべきだと考えられました。ところが街中の店やモノの名前、人の会話など、ありとあらゆるものに注意を向けて考えても、彼を納得させるものは見つかりませんでした。しかしある朝、乗り合いバスに揺られている中で、すっと「ROLEX」という言葉が浮かんだといいます。そうして一世紀以上にわたって世界に轟く名前がここに誕生しました。

一方で、第一次世界大戦の経済不安と税金の重みによって、まだ零細企業であった彼らの会社の財政はひっ迫されました。このような事情も重なり1919年、彼らは会社の本拠地自体をスイスに移動することにします。

1925年になるとブランドの商品である証として、ロレックスの製品一つひとつに金の王冠が刻印されるようになります。この5本の角をもつ王冠の意味については様々な説があります。特によく言われるのは「5本の角が“ROLEX”の5文字と呼応しているということ」、「職人の手仕事へのオマージュとして5本の指を表わしているということ」、また「最高位の象徴である王冠が、ブランドDNAとしてプレステージや卓越性、高品位などを代弁しているということ」などです。このロゴとマークは微細な調整が加えられたことはあれど、ほとんど変わらずに世界髄一の時計ブランドを象徴し続けています。

ロレックスのノウハウ

ロレックスはその機能美のあくなき追求によって、腕時計界に様々な革命をもたらしてきました。特にロレックスの三大発明として有名なものを紹介します。

 

●オイスターケース

オイスターケースは1926年に誕生した世界初の防水時計ケースです。これはケースにベゼルと裏蓋、リューズをねじ込むことによって高い防水性能と堅牢性を実現したウォッチケースの革命児です。特にケース外部につまみが突出している「リューズ」の防水システムは舌を巻くものがあり、この小さな部品は10ものパーツから構成されており、潜水艦のハッチに近い原理で完全な密封状態を実現します。

 

●パーペチュアル

ロレックスは1931年に自動巻きムーブメント「パーペチュアル」を生み出します。ロレックスの革新的な探求心は、ムーブメントにおいても常に受け継ぎ培われています。例えば、高精度で極めて緻密な働きをする「テンワ」と絶妙なバランスをもつ「ヘアスプリング」の協働により、あらゆる角度において高いクロノメーター精度が実現され、振動子が据えられる「ブリッジ」によって、高いクロノメーターの安定性と耐衝撃性が保証されます。残念ながらこの芸術的な精密機構は、雫の一滴すら侵入を許さない堅牢なオイスターケースに守られているため、ロレックスと一部の公式修理店の時計職人しか目にすることができませんが、それでも各金属パーツはスイスの伝統技術により様々な装飾的加工が施され、すべてのパーツの角は丁寧に面取りがなされているといわれています。「美は細部に宿る」とはよく言ったものです。

 

●デイトジャスト

ロレックスは1945年に、24時になると「小窓」が示す日付が自動で変わるという機能を搭載した「デイトジャスト」を発表します。デイトジャストが発表されるまで日付は、ダイヤル周りに表示された、日にちに相当する数字を、時針で示すことで表示していました。デイトジャスト機能の登場で、日付表示がより明確になるとともに、デザインとしても斬新だったためその後急速に腕時計界で普及していきます。

最後に

ロレックスは常に革新の精髄を胸に前進する時計メーカーです。その気概が形となった腕時計たちは、世界の様々な極地で活躍するプロフェショナルの腕の上で、“時の番人”としてあらゆる歴史的瞬間を刻んできました。メルセデス・グライツがイギリス海峡を泳いで渡ったときには「オイスター」が、サー・エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイがエベレストを登頂したときには「オイスター パーペチュアル」が、ウィリアム・J・ナイトがマッハ6.7で空を飛び抜けた瞬間には「GMTマスター」が腕につけられていました。卓越した技術で完璧を追及するロレックスの魂はそんな冒険家の開拓精神と常に共鳴しているのです。

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